日本学術会議の「軍事研究」への声明について

前の記事日本学術会議「安全保障と学術に関する検討委員会」についてで触れた「軍学共同」の研究に関して、同委員会で声明案がとりまとめられたという報道がありました。東京新聞の記事「『軍事研究しない』学術会議継承 防衛省助成応募は禁止せず」に詳しく書かれています。

1年半近く前に書いた記事「軍学共同」と日本学術会議の声明についてにある防衛省助成の件については、大学に委ねるというよりも、むしろ、大学の責任を一層、明確にすべきであるという声明です。日本学術会議の関係者として、学術界の矜恃を表明した声明をまとめられた関係者の方々に敬意を表します。

この件といくらか関係する日本学術会議に関する報道がありました。ZAITEN2017年4月号(ZAITEN201704広告)に「日本学術会議『暴走会長』を生むガバナンス不在」が出ました。現会長の下で1年半、副会長を務めた者として、副会長退任後のありようには疑問を持ったまま、責任の一端を感じつつも、報道されていることには愕然としています。多くが公表された会議の記録などから得られる情報から確認できます。

日本学術会議のガバナンスについては、以前に「日本学術会議のあり方の見直しについて」などでも書きましたが、先に挙げた声明をとりまとめることのできる現会員の方々の見識にこうした問題を解決する力を期待したいところです。

日本学術会議「安全保障と学術に関する検討委員会」について

日本学術会議では、「安全保障と学術に関する検討委員会」を設置して、(とくに大学における)軍事研究への関与の在り方を検討することになったと報道されている。昨年の10月に関連の記事を書いてから8ヶ月、この間に身近ではいろいろと意見を聞くことがあった。

今回の検討委員会の設置は5月20日の幹事会で決定され、新聞等でも報道されたが、日本学術会議では、その後に記者発表をしたとある。検討委員会の設置趣旨は以下のように述べられている。

日本学術会議は 1950 年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わな い決意の表明(声明)」を、1967 年には「軍事目的のための科学研究を行わ ない声明」を発出した。近年、軍事と学術とが各方面で接近を見せている。 その背景には、軍事的に利用される技術・知識と民生的に利用される技術・ 知識との間に明確な線引きを行うことが困難になりつつあるという認識が ある。他方で、学術が軍事との関係を深めることで、学術の本質が損なわ れかねないとの危惧も広く共有されている。 本委員会では、以上のような状況のもとで、安全保障に関わる事項と学 術とのあるべき関係を探究することを目的とする。 具体的には、以下のような審議事項を想定している。①50 年及び 67 年決議以降の条件変化をどうとらえるか ②軍事的利用と民生的利用、及びデュアル・ユース問題について ③安全保障にかかわる研究が、学術の公開性・透明性に及ぼす影響 ④安全保障にかかわる研究資金の導入が学術研究全般に及ぼす影響 ⑤研究適切性の判断は個々の科学者に委ねられるか、機関等に委ねられるか

日本学術会議は「軍学共同」の在り方について学術界からのメッセージを出すことができるだろうか。

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「軍学共同」と日本学術会議の声明について

平成27年度から、防衛省が安全保障技術研究推進制度を設けて、大学等に研究費の支援を始めた。2015年9月25日付けで、公募した課題の選考結果を公表している。

大学はこれまで日本学術会議の「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(昭和42年10月20日 第49回総会)を尊重してきた。しかしながら、最近の大学における方針変更とも思える状況には危機感をおぼえる。2004年から3年間研究科長を務め、5年ほど前まで在職した東京大学情報理工学系研究科が「軍事研究解禁」との報道(2015年1月16日産経新聞)に驚愕した。後日、関係者からは同研究科内での議論の状況を聞いたが、組織としての責任ある判断であったのかよく分からない。

冒頭にあげた防衛省安全保障技術研究推進制度(競争的資金制度)の採択課題を見て目を疑った。豊橋技術科学大学から申請された課題が採択されている。同大学の学長は、日本学術会議会長の大西隆氏である。大西氏が2011年10月に学術会議会長に就いたときに、2013年4月までの1年半にわたって副会長を務めた(任期途中で退任)が、現在の状況を見るにつけ、科学者を代表する組織の危うさを感じている。

日本学術会議で以前の声明との関係を議論したとは聞かない。大学においても同じである。議論のないままに「組織の記憶」を捨て去ることは愚挙だといえよう。

(本稿は筆者の個人の意見を表明したものである。)

 

 

 

安保法制に対する学者の意見と日本学術会議

「安全保障関連法案に反対する学生と学者による共同行動」(2015年7月31日)に参加してきました。時間の関係で、一部だけでしたが、それでも、学生の方々の真摯な取組と学者(研究者、科学者)の真剣な活動に心を打たれました。一方で、日本学術会議の姿が見えてこないことに疑問を感じます。

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「知の質とは —アカデミック・インテグリティの視点から—」大学質保証フォーラムの開催について

アカデミック・インテグリティ(の一端)については、これまでにもこのBlogに書いたことがあります。2年ほど前に研究不正について議論が行われ始めたときにさらにその前2年半ほど前のことを回顧しながら考えを書きました。

科学者倫理に思うこと

Academic Integrity と Research Integrity

など、さらにはそれ以降の記事の多くも、これに関係する話題が多かったと思います。続きを読む →

「東大が軍事研究解禁・・・」の報道について

2015年1月16日産経新聞朝刊の第一面に掲載された記事に驚きました。sankei.comのオンラインニュースにも出ています。そこには、

 東大は昭和34年、42年の評議会で「軍事研究はもちろん、軍事研究として疑われるものも行わない」方針を確認し、全学部で軍事研究を禁じた。さらに東大と東大職員組合が44年、軍事研究と軍からの援助禁止で合意するなど軍事忌避の体質が続いてきた。

ところが、昨年12月に大学院の情報理工学系研究科のガイドラインを改訂し、「軍事・平和利用の両義性を深く意識し、研究を進める」と明記。軍民両用(デュアルユース)技術研究を容認した。ただ、「成果が非公開となる機密性の高い軍事研究は行わない」と歯止めもかけた。以前は「一切の例外なく、軍事研究を禁止する」としていた。

とあります。

情報理工学系研究科に4年近く前まで在籍した者にとってはまったく意外なことでした。2004年の国立大学法人化のときに研究科長を3年間務め、法人化に伴う国立大学の変化も見た者が、4年前に離れてその後は足を踏み入れないできた組織で何が起こっているのかと関心を持たざるを得ません。

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日本学術会議のあり方の見直しについて

このところ、日本学術会議のことについて意見を述べることが多くなっています。
すでに書いてきたことですが、この9月末で11年間務めた会員の任期を終えました。しかし、今後の日本学術会議のあり方には深く関心を持っています。一般の方々にはその背景の説明が必要かもしれません。制度的には、2004年(平成16年)の日本学術会議法の改正によって新たな「新生学術会議」として翌年に第20期が始まり、この9月に3年を期とする9年が経ったところですが、この法改正に伴って「10年後に日本学術会議のあり方を見直す」とされていることが学術界にとっての大きな課題だということです。科学者84万人を代表して社会に学術の責任を果たす組織として、日本学術会議のあり方があらためて見直されるわけです。

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日本学術会議の今後について

一月前に「日本学術会議の運営について」の記事を書きました。そこでは、今年の10月から始まる第23期の運営体制のあり方について、とくに、会長選挙等の 「透明性」の確保が必要だと述べました。実際、10月1日には、会長選挙によって、前期からの大西隆氏が再任されました。一般の方々にも学術会議を理解していただけるように、第23期会員の方々には、「10年目の見直し」に向けて、以下のような課題も認識して活動を進めていただきたいと思います。

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日本学術会議の運営のあり方について

日本学術会議の会員として11年務めてきましたが、今月末で任期を終えることになります。日本学術会議は1949年に設置され、これまでにいくどかの制度的な変更がありました。最近では、2005年にそれまでとは違った方式で会員を選出するなどの改革が行われ、10年後の2015年にそれが評価されることになっています。
一会員として、現在の日本学術会議の運営のことを関係の方々にお伝えしたいと思います。会員としての活動については別の機会に報告したいと考えています。

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論文査読の陥穽

研究論文はピアレビューによってその質が保証されるというのが一般的です。しかし、驚くべきことが起きていました。

SAGE社の出版する雑誌で60本の論文撤回 1人の著者が複数の別名を使って自分の投稿論文を自分で査読

内容がどうのこうのとことではなく、査読をごまかしたというわけです。最近は、投稿論文の査読をオンラインで行うことが多いことから、起きたことだということでしょうか。SAGE社は more than 700 journals and over 800 books を刊行しているとのことです。論文誌ごとに査読者候補のリストを作っているでしょうから、そこに、たくさん偽名で登録をしておいて、自らの論文を「査読」したということでしょう。

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