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日本学術会議 第20期〜第25期初めにかけての年表:会員欠員、安保法制関連等の情報

2020/11/12 に改訂しました

日本学術会議の会員推薦方法が変更されて2005年に”新生学術会議”第20期が発足してから2020年の第25期会員の任命拒否までの年表です。議論される事項等を書き入れてあります。データはすべて公開されている文書から抜き出したものです。

リンク先のファイルでは文字の色分けで判別しやすくなっていますが、後にテキストも添えておきます。

日本学術会議 第20期〜第25期 年表

        日本学術会議第20期〜第25期 年表
2001/04/26 小泉純一郎内閣
第20期
2005/10/03 第146回総会 会員210名 2005/0/01付け任命 会長 黒川清
2006/02/13 第147回総会(臨時)
2006/09   会員1名定年退職、補欠会員1名任命
2006/09/26 安倍晋三内閣
2006/10/02 第149回総会 会長 金澤一郎
2007/09/26 福田康夫内閣
2008/09/24 麻生太郎内閣
第21期
2008/10/10 第154回総会 会員105名 2008/10/01付け任命 会長 金澤一郎
2009/09/16 鳩山由紀夫内閣
2010/06/08 菅直人内閣
2011/01/17 会員1名定年退職、補欠会員1名前任会員定年退職翌日付け任命
2011/03/11 東日本大震災
2011/06-07 会員3名定年退職、補欠会員3名前任会員定年退職翌日付け任命
2011/07/11 第160回総会(臨時) 会長 廣渡清吾
2011/08/01 会員1名定年退職、補欠会員1名前任会員定年退職翌日付け任命
2011/09/02 野田佳彦内閣
2011/09   会員3名定年退職、補欠会員3名 2011/10/01付け任命
第22期
2011/10/03 第161回総会 会員105名が2011/10/01付け任命 会長 大西 隆
2011/12   会員1名定年退職
2012/04/09 第162回総会 補欠会員候補者の承認
2012/04/30 会員1名辞職
2012/05/31 補欠会員1名任命
2012/11/30 補欠会員1名任命
2012/12/26 安倍晋三内閣
2014/04-07 会員3名定年退職(第22期末2014/09任期のため後任補充対象外)
2014/07/31 内閣府「日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議」(第1回)
第23期
2014/10/01 第168回総会 会員105名 2014/10/01付け任命 会長 大西 隆
2015/03/20 内閣府「日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議」報告書提出
2015/07/08 防衛施設庁「安全保障技術研究推進制度」公募開始
2015/09/06 会員1名定年退職(補充対象)
2015/10-2016/01 会員3名定年退職(補充対象)
2015/09/30 「平和安全法制」:自衛隊法等の一部改正等
2016/11/01 補欠会員1名任命
2016/06/24 安全保障と学術に関する検討委員会(第1回)
2016/05/15 補欠会員3名任命
2016/05-09 会員3名定年退職(補充対象)
2016/11/18 会員1名定年退職(第23期末任期のため後任補充対象外)
2016/12/01 会員1名退職(第24期末任期のため補充対象)
2017/02/04 学術フォーラム「安全保障と学術の関係:日本学術会議の立場」開催
2017/03/24 声明「軍事的安全保障研究に関する声明」
2017/04/13 報告「軍事的安全保障研究について」
2017/05/15 補欠会員1名任命(第24期末任期)
2017/04-09 会員8名定年退職(第23期末任期のため後任補充対象外)
第24期
2017/10/02 第175回総会 会員105名 2017/10/01付け任命 会長 山極寿一
2018/02   会員1名定年退職
        〈臨床医学〉(第24期末任期 補充対象)
2018/09/01 会員〈臨床医学〉逝去(第25期末任期 補充対象)
2018/09   会員2名定年退職
        〈基礎生物学〉(第24期末任期 補充対象)
        〈政治学〉(第24期末任期 補充対象)
2018/11/05 補欠会員2名任命
        〈臨床医学〉(第25期不再任)
        〈基礎生物学〉(第25期再任)
2018/10-2019/01 会員3名定年退職
           〈臨床医学〉(第24期末任期 補充対象)
           〈電気電子工学〉(第24期末任期 補充対象)
           〈材料工学〉(第24期末任期 補充対象)
2019/05/30 補欠会員4名任命
        〈臨床医学〉(第25期再任)
        〈臨床医学〉(第25期末任期として)
        〈電気電子工学〉(第25期再任)
        〈材料工学〉(第25期再任)
2019/6-8   会員2名定年退職
        〈臨床医学〉(第24期末任期 補充対象)
        〈言語・文学〉(第24期末任期 補充対象)
2019/11/18 補欠会員2名任命
        〈言語・文学〉(第25期再任)
        〈臨床医学〉(第25期不再任)
2019/10-2020/5 会員3名定年退職(第24期末任期のため後任補充対象外)
2020/09/16 菅義偉内閣
第25期
2020/10/01 第175回総会 会員99名 2020/10/01付け任命 会長 梶田隆章
2020/10/01 菅義偉内閣総理大臣6名の会員任命拒否

日本学術会議の効率的な業務改革への取組みについて

日本学術会議に対して、菅内閣総理大臣は第25期会員の任命拒否の理由を明確にせず、一方で河野太郎行政改革担当相は2020年10月9 日に行政改革の検討対象として「二百十人の学術会議の会員数や手当には踏み込まず、国から支出される年間十億円の予算や会議事務局の約五十人の定員を見直す。」との考えを示した。

会議事務局は会長をはじめとする幹部会員とともに種々の学術活動を支えている。会員は多数の審議や科学者コミュニティーとの連携、政府や社会及び国民等との連携、国際アカデミーとの連携等々、種々の活動を行うことが任務であるが、210名の会員は非常勤の特別職の国家公務員、約2000名の連携会員は非常勤の一般職の国家公務員である。つまり、会長以下、全員が非常勤であり大多数が大学や企業に本務を持っている。こうした会員等の活動を支える事務局は政府の省庁の行政とは異なる側面があるといえよう。

10数年前の会員当時には関係会員と事務局職員が共同で会員業務の改革に努めた。学術会議の構成員である会員等と事務局の協働作業であった。学術会議での主要な業務は「ハンコ押し」ではない。業務の改善にあたってはその内容に通じた当事者が積極的に関与しなければ不可能である。当事者としてその一端を紹介する。

  1. 会員選考事務の改善:2005年に制度改革によって新生日本学術会議第20期が発足した。このときの会員は特例によって学術会議とは別に組織された選考のための委員会によって選出された。2008年に定例の3年の期ごとの「半数改選」が初めて行われたが、このときは候補者の推薦は紙面による提出であった。次の期の2011年の改選にあたっては、「電子化」による会員候補者の推薦を行うこととした。この方式はそれ以降、3年ごとに行われていて4000件以上の推薦書の提出、および審議のための処理が電子的に行われている。
  2. 会員・連携会員の意見交換のための掲示板:2011年の東日本大震災の際には学術会議においても対応のための数回の緊急集会が開かれた。その際に、出席がままならない会員等への連絡や意見交換のために会員有志によって臨時の掲示板を用意した。これをもとに、2012年10月には SCJ Member Forum を開設した。
  3. ビデオ会議:2012年12月21日の幹事会により、日本学術会議会議室以外から Skype 等を利用して会議に参加できるようにした。本務を有する会員等には勤務先からの移動に伴う時間的制約等、たとえ東京であっても会議への出席ができない状況を改善したといえる。また、会議出席のための旅費の節減にも寄与しているといえよう。
  4. メール審議:2013年9月の幹事会により、一定の議題に関しては、日本学術会議会議室に参集して議決を行う代わりに SCJ Member Forum の掲示板における意見交換・質疑を経て、メールによる議決を可能として、迅速な審議を行うことができるようにした。

これらは、いずれも今となっては一般的だといえようが、これらを10年ほど前に公式な手続きとともに実施した。2014年に会員を退任したのでその後の進展については承知していないが、不断に会員と事務局が効率的な会務を行っていると思われる。

これらが COVID-19 下での審議の対策として活かされ、多くの提言等がまとめられ活動を停止することなく第24期を終えた。10月1日に新たな第25期が始まり、さらなる活動が期待される。そのためにも、任命拒否された6名の会員候補者がただちに会員として任命されることを望む。

日本学術会議の会員と事務局とのこのような取組みも広く理解いただきたい。

日本学術会議の「総合的・俯瞰的」活動のために6名の会員任命を

2020年10月1日の日本学術会議第25期会員の任命にあたって、菅総理大臣は6名の科学者を除外した。その理由は一向に説明されないが、加藤官房長官他から、「総合的・俯瞰的」ということばが多く出てきた。おそらく、誰かがこれまでの日本学術会議に関して議論された文書から引いてきたのであろう。

菅氏は理由なき任命拒否を撤回して6名の科学者の会員を任命すべきである。

日本学術会議の制度改革にかかる2003年の報告書、およびその報告書にある「10年後の見直し」にかかる2015年の内閣府有識者会議の報告書における記述は以下の青字部分のように書かれている。

「日本学術会議の在り方について」(2003/02/26)
総合科学技術会議

I はじめに
・・・
(p.1)
2.本意見の骨子
○今日、日本学術会議は我が国の科学者コミュニティを代表する組織として、社会とのコミュニケーションを図りつつ、科学者の知見を集約し、長期的、総合的、国際的観点から行政や社会への提言を行うことが求められている。
○このような役割を充分果たすためには、まず、会員制度、部門等の構成、運営体制等の改革を早急に行うことにより、科学者コミュニティの総体を代表して俯瞰的な観点に立ち科学の進展や社会的要請に対応して柔軟かつ機動的に活動しうる体制に変革しなければならない。
・・・
II 科学者コミュニティの果たすべき役割
・・・
(p.4)
2.組織について
日本学術会議は、新しい学術研究の動向に柔軟に対応し、また、科学の観点から今日の社会的課題の解決に向けて提言したり社会とのコミュニケーション活動を行うことが期待されていることに応えるため、総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められている。

ここでは、「日本学術会議が総合的・俯瞰的観点から活動する」としていて、科学者個人の研究に触れているわけではない。

「日本学術会議の今後の展望について」(2015/03/20)
内閣府 日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議

2.日本学術会議の組織としての在り方
(1)意識、活動へのコミット
② 求められる人材と選出方法
・・・
(p.24)
【有識者会議としての意見】
第2で述べた日本学術会議に期待される機能を踏まえると、その会員・連携会員は、自らの専門分野において優れた成果を上げていることに留まらず、様々な課題に対し、自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点を持って向き合うことのできる人材であることが望ましい。・・・

政府による説明はここにある「俯瞰的な視点」を引用したのか?しかし、ここでは「総合的」が一緒に出てきているわけではない。2003年のものと2015年のものをごっちゃにしてあいまいな表現にしたとも考えられよう。それにしても、重要なのは、「自らの専門分野において優れた成果を上げていることに留まらず」が前提である。その判断はそれぞれの専門分野の科学者しか判断できない。各分野の専門家によって「優れた成果を上げている」と判断されて日本学術会議から推薦された6名の科学者のをただちに任命すべきである。