「軍学共同」と日本学術会議の声明について

平成27年度から、防衛省が安全保障技術研究推進制度を設けて、大学等に研究費の支援を始めた。2015年9月25日付けで、公募した課題の選考結果を公表している。

大学はこれまで日本学術会議の「軍事目的のための科学研究を行わない声明」(昭和42年10月20日 第49回総会)を尊重してきた。しかしながら、最近の大学における方針変更とも思える状況には危機感をおぼえる。2004年から3年間研究科長を務め、5年ほど前まで在職した東京大学情報理工学系研究科が「軍事研究解禁」との報道(2015年1月16日産経新聞)に驚愕した。後日、関係者からは同研究科内での議論の状況を聞いたが、組織としての責任ある判断であったのかよく分からない。

冒頭にあげた防衛省安全保障技術研究推進制度(競争的資金制度)の採択課題を見て目を疑った。豊橋技術科学大学から申請された課題が採択されている。同大学の学長は、日本学術会議会長の大西隆氏である。大西氏が2011年10月に学術会議会長に就いたときに、2013年4月までの1年半にわたって副会長を務めた(任期途中で退任)が、現在の状況を見るにつけ、科学者を代表する組織の危うさを感じている。

日本学術会議で以前の声明との関係を議論したとは聞かない。大学においても同じである。議論のないままに「組織の記憶」を捨て去ることは愚挙だといえよう。

(本稿は筆者の個人の意見を表明したものである。)