日本学術会議「安全保障と学術に関する検討委員会」について

日本学術会議では、「安全保障と学術に関する検討委員会」を設置して、(とくに大学における)軍事研究への関与の在り方を検討することになったと報道されている。昨年の10月に関連の記事を書いてから8ヶ月、この間に身近ではいろいろと意見を聞くことがあった。

今回の検討委員会の設置は5月20日の幹事会で決定され、新聞等でも報道されたが、日本学術会議では、その後に記者発表をしたとある。検討委員会の設置趣旨は以下のように述べられている。

日本学術会議は 1950 年に「戦争を目的とする科学研究には絶対従わな い決意の表明(声明)」を、1967 年には「軍事目的のための科学研究を行わ ない声明」を発出した。近年、軍事と学術とが各方面で接近を見せている。 その背景には、軍事的に利用される技術・知識と民生的に利用される技術・ 知識との間に明確な線引きを行うことが困難になりつつあるという認識が ある。他方で、学術が軍事との関係を深めることで、学術の本質が損なわ れかねないとの危惧も広く共有されている。 本委員会では、以上のような状況のもとで、安全保障に関わる事項と学 術とのあるべき関係を探究することを目的とする。 具体的には、以下のような審議事項を想定している。①50 年及び 67 年決議以降の条件変化をどうとらえるか ②軍事的利用と民生的利用、及びデュアル・ユース問題について ③安全保障にかかわる研究が、学術の公開性・透明性に及ぼす影響 ④安全保障にかかわる研究資金の導入が学術研究全般に及ぼす影響 ⑤研究適切性の判断は個々の科学者に委ねられるか、機関等に委ねられるか

日本学術会議は「軍学共同」の在り方について学術界からのメッセージを出すことができるだろうか。

日本学術会議の中に設置された検討委員会の委員は15名である。会員の互選で選ばれた大西隆会長も委員の一人である。昨年の記事でも述べたように、また、その後に新聞等でも報道されたとおり、大西氏が学長を務める国立大学法人豊橋技術科学大学は、昨年度に防衛省の「安全保障技術研究推進制度」の研究資金を得ている。国立大学法人における外部資金の導入については、(出資元がどこであれ)学長が責任をもつことになっている。昨年度の研究資金についても、もちろん、そのように扱われているはずであろう。他の国立大学も昨年度の防衛省の新制度による研究資金を受けているが、学長が日本学術会議の検討委員会に関与しているわけではない。

要は、日本学術会議の検討委員会の委員に、議論の対象になると考えられる研究費を導入した大学の責任者が加わっているのが、学術界における検討にあたっての科学者の代表として相応しいかどうかということである。もっとも、以前から、共同研究といった形で防衛省からの研究資金が流れていることもあるので、この例だけではないかも知れない。しかし、大学の責任者が自ら判断した結果を正当化するかのようなことは論外であろう。しかも、それを検討する組織の代表者である会長と重なっているいうのが奇妙だといわざるを得ない。

検討委員会では中立的に公正に議論が進むことを期待するが、この委員会が84万人といわれる我が国の科学者を代表することができるであろうか。日本学術会議の会員・連携会員の約2,200名は、科学者84万人を代表して我が国の学術の在り方に責任をもっている。検討委員会の議論を注視したい。

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