文科省の「研究不正に向けた取組」について

8月29日に公表された文部科学省の平成26年度概算要求の資料(のp.41から始まるp.50)に「研究不正に向けた取組」の要求が示されています。そこには、「考え方」として、「研究不正の防止に向けて、副大臣を座長とした『研究における不正行為・研究費の不正使用に関するタスクフォース』を設置し、これまでの不正事案に対する対応の総括を行うとともに、今後講じるべき具体的な対応策について検討。また、平成26年度概算要求に、研究倫理教育プログラムの開発や普及促進等に係る経費・体制強化を盛り込む。その際、日本学術会議とも連携しながら取組を推進」とあります。

「研究倫理教育プログラムの開発の支援」がほとんどを占め、あとは「研究倫理に関する調査研究」です。 日本学術会議の声明「科学者の行動規範について」(2006年10月3日)が出されてから、多くの大学でそれぞれに研究不正への対応がとられてきたと思います。学術会議では、これを改訂して、2013年1月25日に声明「科学者の行動規範ー改訂版ー」を出しました。文科省の取組の「研究倫理教育プログラムの開発」というのは、関係機関でこのような研究倫理を定着させるための方策でしょう。もちろん、研究倫理の教育・研修は欠くことができません。しかし、これだけでは現下の研究不正の防止策にはならないことも確かなことです。

研究不正の防止が科学者の責務であるとして、「日本の科学を考える」サイトでは、真摯に議論されています。こうした取組みの次になすべきことが何であるのか、意見が交わされています。また、日本分子生物学会の「第36回日本分子生物学会・年会企画アンケート」結果には、1022名の(主として生命科学系の)研究者の回答が得られています。選択肢の重複回答の場合は回答総数を母数とした比率ですが、
○ 約7割が「研究不正に対する現行システムは(あまり)対応できないと思う」
○ 約半数が「研究不正の調査に第三者の中立機関が対応するのがよい」
○ 約7割が「研究不正を取り締まる外部中立機関の設置が望ましいと(おおむね)思う」
という結果です。こうした研究現場の声を政策に反映させることも必要でしょう。さらに、
○ 研究不正を減らすために、約半数が「教育が必要」、約3割が「厳罰化が必要」
としていることから、各機関における不正への対応が強く求められているといえるでしょう。

文科省の施策の中にも「研究倫理に関する調査研究」がありますが、すでに学協会等で行われている取組みや議論を参考にして、実効ある学術の公正を目指すべく本質的な議論を深めるべきだと思います。

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