大学教員の流動性

この時期、大学では恒例の退職教授惜別会が開かれます。今年は、われわれの研究科でお二人の先生が定年で退職されます。

大雑把に言って、研究科には30名の教授と70名の准教授・講師・助教がいます。研究科ができてから満9年、この間、これまでに8名の先生方が定年退職していますので、今年で10名ということになります。これも大雑把ですが、平均して毎年1名の教授が退職するといってよいでしょう。30名の教授で全100名の教員からなる組織で、この数はどうなのでしょうか。

これだけの情報からでは、「1年で1%しか入れ替わらない膠着した組織」といったイメージが浮かぶかも知れません。しかし、実態はというと、外部からの教授の就任や、若手の教員の入れ替わりがかなりあります。2004年度から3年間に(内部の昇任を除いて)新規に採用された教員は約30名でした。100名の組織で年平均10名が新規に採用されたのですから、毎年10%の入れ替わりがあったということになります。任期制のポストはありませんでした。

組織の性格によって違うでしょうが、年間に10%の教員が入れ替わっているというのは、継続的に教育を行う研究科としては適正なものだと思います。他の組織ではどうなのでしょうか?任期制によって流動性が高くなるということがあるのかも知れませんが、そのような制度がなくても流動性は保たれているといえるでしょう。

一般に、「膠着した組織」という大学像が多く報じられますので、それが社会に印象づけられてしまいます。それを解決するために、「流動性を高めるために任期制を導入する」という「名案」を生み出したのでしょう。しかし、これでは、組織の自律性を無視して「制度」に頼ることになってしまいかねません。

2010/2/20に「大学の国際化の目指すものは?」を書いたときとおなじ思いがあります。大学人は特別なプログラムや制度がなくてもできることをやるというのが筋ではないでしょうか。

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