若手アカデミーとは?

今日は、大阪で開催された日本学術会議公開シンポジウム「若手アカデミーとは何か」

http://www.scj.go.jp/ja/event/pdf/90-s-1.pdf

に参加しました。この案内にあるように、ドイツ、オランダ、オーストリアではそれぞれの国で若手アカデミーが組織されて、活発に活動しているということです。また、ヨーロッパの40ヶ国のアカデミーの連合体ALLEA(All Europian Academies)でも、全欧で若手アカデミーを設立しようとしています。シンポジウムでは、ALLEA事務局長の講演がありました。さらに、2月にはベルリンで全世界的な若手アカデミーの設立準備の会合がありました。そこに出席した4名の若手研究者から詳しい報告がありました。

さて、「若手」は何歳でしょう?おおよそ、平均が35歳だということです。「アカデミー」の理念とは何でしょう?私は、わが国では日本学術会議の理念がそのままあてはまると思っています。実際、若手の方々の報告であがっていた目的はまさに学術会議の目指していることでした。

では、なぜ「若手アカデミー」なのでしょうか。わが国だけではなく、おそらく、他の国でも、アカデミーのメンバーは科学者・研究者の年輩層が占めていることの現れだと思います。大雑把に言って、25歳から40歳までの若手の科学者は、25〜70歳の科学者の1/3を占めるでしょうが、40歳以下の学術会議の会員は皆無です。

話が逸れますが、大学教員の職位は学校教育法によって決まっています。2007年4月に改定されて、職位は助手・助教授・教授から助教・准教授・教授に変わりました。この改定に伴う議論の中で、「若手研究者の自立性・自律性向上」が謳われ、「教授が白を黒と言えば、助手は何であれ『黒』と言う」だとか、「若手の研究に教授が口出しをして、若手は思ったように研究ができない」といった悪例を解消すべきである、といったことが話題になりました。正直なところ、「へぇ、今どき、そういう研究室もあるのか」と疑問に思ったものです。ないとはいえないでしょうが、どの程度でしょうか?データはあるのでしょうか?科学者はデータが基本であると言いながら、行政的な判断に与するときには、自らの経験や多勢の言動に惑わされる恐れがあります。年輩の老練の士は若手のことをおもんぱかって、よかれと思うことを断定的に言うのでしょうが、若手の方々はどう感じているのでしょうか。「助教」の若手科学者はこの職位の改定をどう思ったのでしょうか。

「老練アカデミー」でも、とくに、人材育成に関わる議論の中では若手のことを考えて、よかれと思う提案をしています。若手の方々の意見を聞いて判断しているのですが、それも老練者の考えの中でやっていることです。「聞いてやる」ということではないでしょうが、若手の方々の自律的な行動から示される意見とは違うのかも知れません。老練アカデミーの活動を批判的で建設的な目で見つつ、同じ課題に対して自律的に活動する「若手アカデミー」があれば、老練アカデミーの活動のチェック機構になるでしょう。科学には謙虚でなくてはなりません。科学者からなるアカデミーの活動でもそうでしょう。老練科学者には批判を活力に向ける智慧があるものと信じています。

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