安保法制に対する学者の意見と日本学術会議

「安全保障関連法案に反対する学生と学者による共同行動」(2015年7月31日)に参加してきました。時間の関係で、一部だけでしたが、それでも、学生の方々の真摯な取組と学者(研究者、科学者)の真剣な活動に心を打たれました。一方で、日本学術会議の姿が見えてこないことに疑問を感じます。

「安全保障関連法案に反対する学者の会」に賛同してオンライン署名をしてからこれまでには活動に参加する機会が得られませんでした。日本学術会議の前会長の廣渡清吾氏、前第一部部長の佐藤学氏をはじめ、この会の発起人には分野を越えてこれまでにもさまざまな場面でご教示いただいた方々が多くいらっしゃいます。また、7月20日の「学者100人記者会見」をYoutubeで見て行動すべきだと会合に参加しました。そこでは、池内了氏が以下のように述べておられます。

第2次世界大戦で研究者が軍事のために協力したことを深く反省して、日本学術会議では1950年と67年の2回にわたって「戦争目的のための研究はおこなわない」「軍事研究はおこなわない」と宣誓してきた。公式には日本では大学研究機関等の軍事研究は概ねなかった。それはある意味、世界に誇るべきことだった。まさに日本国憲法を科学者の側が体現して、「軍事のために研究をおこなわない」と誓って実行してきたわけだ。

すでにこのBlogでも述べてきましたが、第19期〜第22期の11年間、学術会議会員を務めた者として、また、その初期第19期に旧第4部でご一緒した池内氏の学術会議への言及には考えさせられましたし、現下の課題に対して学術会議がどのような意見の表出を考えているのかという疑問が強くなりました。最近、周りの方々からもときに尋ねられます。

わが国の84万人の科学者を代表する日本学術会議は、210名の会員と約2,000名の連携会員から構成されています。一方で、「学者の会」にはすでに12,000名を越える科学者が賛同して積極的に発言しています。学術会議の意思の表明が組織的に統一された声(unique voice)である必要はありません。一つにした意見を表明することが難しいことは3.11への対応で議論されてきたことです。「学者の会」の方針と同じ方向であるかどうかはともかく、学術会議は科学者がどのように考えているのかということを社会に伝えるべきでしょう。学術会議が科学者を「代表する」という代表制に関わることだともいえるでしょう。

しかし、このようなことを考えてきた中で、気になることがあります。副会長を務めていた第22期の前半(2011年10月から1年半)に経験したことです。2012年7月6日に野田政権の国家戦略会議フロンティア分科会が首相に提出した報告に関わることです。集団的自衛権「解釈変更を」 国家戦略会議分科会が提言などで以下のように報道されています。

 野田政権の国家戦略会議フロンティア分科会(座長・大西隆東大教授)は6日、野田佳彦首相に2050年に向けた日本の将来像を提言する報告書を提出した。憲法解釈を変えて集団的自衛権の行使を認めるよう求めるなど、首相の持論に沿った内容となった。

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 首相の持論がにじむ安全保障政策は「能動的な平和主義」を提唱。「米国や価値観を共有する諸国と安全保障協力を深化し、ネットワーク化を目指す」とし、「集団的自衛権に関する解釈など旧来の制度慣行の見直しなどを通じて、安全保障協力手段の拡充を図るべきだ」と強調。集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈の変更を求めた。

 首相は就任以来、集団的自衛権は「現時点で憲法解釈を変えることは考えていない」という姿勢だが、2009年の著書では「集団的自衛権は認めるべきだ」との考えを示していた。

 集団的自衛権では安倍、麻生両政権が有識者会議を設け行使容認に向けた議論を始めたが、政権交代でたなざらしになっている。

この分科会座長を務めた大西隆氏は当時、日本学術会議会長でした。学術会議会長として政権の会議座長を務めたわけではないので、副会長としても直接の関係を持つことはありませんでした。大西氏は第22期に続けて2014年10月からの第23期にも学術会議会長に就いています。日本学術会議は内閣府に置かれていますが、政府からの独立性が明示されています。

日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業及び国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和24年(1949年)1月、内閣総理大臣の所轄の下、政府から独立して職務を行う「特別の機関」として設立されました。

しかし、現下の課題に対して、「集団的自衛権の行使を禁じる憲法解釈の変更を求めた」との提言をまとめた者が会長を務める日本学術会議が意見の表出を躊躇うとすれば、科学者を代表する機関としての大きな問題と言わざるを得ないでしょう。以前から指摘されていることですが、日本学術会議の存立に関わることだと思います。

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