日本学術会議の研究不正の防止策と事後措置に関する提言について

日本学術会議の提言「研究活動における不正の防止策と事後措置 -科学の健全性向上のために-」が2013年12月26日に出されました。文部科学省の取組については以前に触れましたが、今回の学術会議の提言は、研究者側から文科省の施策に応えようとするものなのでしょう。

提言の要旨には、これまでの日本学術会議における十数年の関連した審議や提言等の経緯を述べたあとで、今回の具体的な提言が書かれています。しかし、「・・・を行う」と述べられていますが、その主体がよく分からないし、最後に「・・・が必要である」と結語があるのは、他人ごとのように聞こえます。

要旨には、以下のように提言が述べられています。

これらを踏まえて、第22期科学研究における健全性の向上に関する検討委員会は、本提言「研究活動における不正の防止策と事後措置-科学の健全性向上のために-」で、我が国における世界最先端の科学研究の推進及びその健全化を目指して下記の提言を行うものである。

1. まず、研究不正を事前に防止する方策として、①行動規範教育の普及啓発活動を行うとともに、②行動規範に基づく研修プログラムを作成し、③研究機関における研修プログラムによる行動規範教育の必修化、④競争的資金申請時等における行動規範教育既修の義務化、⑤競争的資金に基づく雇用時の行動規範教育既修の義務化により、上記研修プログラムを普及させ、⑥競争的資金による研究助成に基づく契約時の誓約書提出を求め、⑦さらに、研究機関等に行動規範教育責任者と研究費総括責任者を定め、研究不正をモニタリングする委員会を設置して組織ガバナンスを確立しなければならない。また、⑧上記の遵守を確認するために、研究機関等における行動規範教育を調査し、⑨第三者による検証を可能にするため研究で取得したデータの保存が必要になる。

2. 次に、上記の実施にもかかわらず、研究不正が発生した場合の対応方策として、①当該研究機関において外部有識者を含めた第三者委員会を遅滞なく設置して速やかに処理するとともに、公益通報受付機関を設 置するなどの対応措置を強化する。②また、当該研究機関において十分な対 処が行われない場合には、研究不正に関して設置された第三者機関が、改善措置を勧告する等の対応をとる。③さらに、研究不正事案を公開して再発防止に努めるとともに、研修プログラムの拡充に活かすことが必要である。

本文には、「取締りを強化する」とか、「行動規範教育の必修化」とか、「研究不正に関する公益通報を受ける」といったことばが、乱雑に出てくるように感じました。

以下のようなことも書かれているのですが、どういうことなのか、よく理解できません。国際的な環境下にある学術研究に関して、「研究不正に関する文化の違いがある」という認識はどこからくるのか分かりません。

標準的な研修プログラムを作成する際に、外国における同種プログラムを参考にする一方で、研究不正に関する日本と外国の文化の違いに十分注意し、欧米のプログラムを日本にそのまま機械的に導入することには慎重でなければならない。また、こうした研修プログラムの作成には経費を要することから、国はそのために必要な支援を行うべきである。

断片的な引用だけで判断するのはよくないのでしょうが、全般的に、少々、違和感をおぼえるというのが率直な印象です。

日本学術会議のこれまでの審議や提言等についても触れてるのですが、自ら検討課題としていた「審理裁定機関の設置」についても、明確な判断を示すべきではなかったでしょうか。

それにしても、依然として研究上の不正が頻繁に指摘される状況を考えると、上から目線で制度を提言するだけではなく、その根源的な背景にある学術公正性のあり方にも目を向ける必要があるのではないかと思います。

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