最近、文書のなかに「○○さんにお世話になりました」といった表現のあるのを目にするようになりました。ここ数日、日本語で書かれた修士論文や卒業論文に目を通していて、いくつもの論文の謝辞にこのような表現があったので気になっています。
私は日本語を専門とする者ではないので、学術的な見方はできませんが、なんとなく、しっくりきません。話し言葉では「○○さん」というのが一般的ですし、もちろん、私もそう話します。とくに、面と向かって二人称として呼びかけるときには、他の呼称がないときにはこれしかないでしょう。親しい間柄のときには、ほとんど「○○さん」です。
しかし、他人が目にする文書の中で、三人称としての人名には「氏」をつけるものだと思って、長い間そのように実践してきた者が、「○○さん」を見ると、背中がかゆくなります。メールのメッセージでは、ときに相手の方を指す二人称も現れますが、三人称としての人名がほとんどでしょう。メールの場合には、それを受け取って読む相手が特定できますので、双方にとって親しい方を指すには「○○さん」も使いますが、なにより無難(?)なのは「○○氏」ではないでしょうか。
このような表現に現代的な基準というものがあるのかどうか、また、そのようなことはどこで教わるのか、疑問になってきました。大学生の頃、句読点の使い方、英文のコンマとセミコロンの使い方、数学によく現れるギリシャ文字の読み方などは、(日本語や英語の講義ではなく)専門分野の講義の中で、「・・・だから、注意するように」といった形で教わったように記憶しています。思いや感情を述べる文章はともかく、論文のような客観的で論理的な文章の構成やスタイルについては、卒業論文を書く機会に教わったのでしょう。私も、研究室では折に触れてこのようなことを指摘していますが、それでも「えっ」と思うことがあります。
一週間ほど前に「並列性忘却プログラミング 」について書いたときに、プログラムのスタイルに触れました。1970年頃の The Elements of Programming Style が頭にありました。木村泉先生の翻訳版は「プログラム書法」という書名です。
http://www.amazon.co.jp/Elements-Programming-Style-Brian-Kernighan/dp/0070342075
http://www.amazon.co.jp/プログラム書法-第2版-Brian-W-Kernighan/dp/4320020855
プログラムの記述のスタイルを述べているものですが、たしか、その著者たちが英文の書き方を述べた名著 The Elements of Style を引用していたように記憶しています。先日、手元にあったものを探したのですが、見あたらなかったので Amazon から購入しました。いくつか版があるようですが、私が購入したものは
http://www.amazon.co.jp/Elements-Style-Fourth-William-Strunk/dp/020530902X
です。懐かしく読んでいます。
日本語にもこうした教科書があるのでしょうが、適切なものを知りません。少し探してみたいと思います。