Daily Archives: 2010-02-26

規制を緩和するということは

ものごとを決める議論の中で、効率的で効果的な方策を提案したときにも、それが窮屈だと、その規制や制約を緩和する方向の意見が出ます。ひとたび、そのような意見が出ると、結論がその方向に進みがちになるということは往々にして経験します。

しかし、一方で、2009年1月12日から施行された米国の入国制度ESTAの手続きには、少々、驚きました。日本の外務省も

http://www.mofa.go.jp/mofaJ/toko/passport/us_esta.html

で案内しています。Electronic System for Travel Authorization (電子渡航認証システム) というのですから、そうかと思えるところもあるのですが、なにしろ、専用のWebサイトからしか申請できないというのです。紙媒体の申請はもちろんのこと、大使館等の窓口で申請するということさえ排除しています。

ここには、情報力格差(ディジタルデバイド)への配慮といった観点は見られません。なるほど、こういった決定もあるのか、と思ったものです。これは、規制というわけではありませんが、より広い可能性は排除して、一つの方向づけに強制してしまった例でしょう。これを「緩和」するところは、手数料収入を得て代行するという民間のサービスに委ねたというわけです。

最近では、わが国でも(参加費が無料の)シンポジウムなどでは、Webを通じてのみ受け付けるという例も増えたように思いますが、それも「無料」だからかもしれません。今日、1件、申込みをしました。

このように、情報技術によって効率的な方法をとろうとすると、それ以外の可能性を制約してしまうことは往々にして起こります。そして、こうしたシステムを導入しようという議論になると、「従来型の」FAXや文書でも受け付けることにすべきだ、という緩和策が出てくるのです。結局のところ、新しい試みは従来型のものと併用することになって、かえって手間がかかるということにもなりかねません。痛し痒しといったところです。

もちろん、情報力格差への配慮は必要ですが、対象とする人たちの範囲が特定できるようなシステムでは、うまく合意形成をして効率的な方式をとるようにすることもできるでしょう。また、非常に難しいことでしょうが、一般利用者向けの情報システムでも、そのアキレス腱ともいえる「従来型との併用」システムの解決策を考える時期にきているのではないでしょうか。「規制緩和」が「正論」ではあるのですが、どこかで「規制する」ということも必要ではないかと思います。

メールの添付ファイル

最近、ファイルが添付されて届くメールが多くなっているような気がしています。どの程度か調べてみました。10年少し前から、やりとりしたメールを保存していますので、それを使いました。メールアドレスは仕事用のもので、もちろんのこと、スパムメールは除いています。

まず、送受信メールの状況は、以下のようでした。2006年まで単調に増加していますが、2007年から少し減り気味です。振り返ってみても、2004年から2006年までは仕事の面でやりとりが多かったと思います。

最近は全メール数に占める発信・返信の比率は20%強といったところです。もちろん、自らが発信するメールもありますので、メールを受け取ってから、求められている返信をしたもの、あるいは求められていなくても返事したものというのは5通に1つはないといえます。普通、そのようなものでしょうか。

メール数 発信数 比率
1999 6074 1573 0.26
2000 8005 2082 0.26
2001 8550 2214 0.26
2002 11217 2958 0.26
2003 12452 3717 0.30
2004 14522 3873 0.27
2005 15845 3568 0.23
2006 20725 4356 0.21
2007 14437 2975 0.21
2008 13526 3014 0.22
2009 12120 2667 0.22

一方、ファイルを添付したメールの数は以下のようでした。

メール数 添付メール数 比率
1999 6074 89 0.01
2000 8005 317 0.04
2001 8550 687 0.08
2002 11217 996 0.09
2003 12452 1539 0.12
2004 14522 2320 0.16
2005 15845 2384 0.15
2006 20725 2546 0.12
2007 14437 1795 0.12
2008 13526 1915 0.14
2009 12120 1787 0.15

10年以上前には数%だったのですが、その後、次第に増えてきた様子が分かります。全メールに占める割合が15%というのですから、多いと感じるのも当然でしょう。

最近、MS WordやExcelのファイルが添付されていて、それに書き込んで返送するように指示されたメールを受け取ることが多いように感じます。このようにして受け取った添付メールの返信はまた添付メールになりますので、添付ファイルの送信者は上の統計に2倍の貢献をしているといえます。とくに、会合のなどの日程調整のために、日付を書き込んで都合を記入するようにというExcelファイルが多いと思います。

私はこの日程調整のような添付メールは好きではありません。こういった意見を持っている人は少なくないでしょう。多くは、メールの本文にテキストで返信用の項目を書けば済むことを、どうして添付ファイルを使うのでしょうか。人それぞれにメールを読む環境は違うでしょうが、少なくとも、日程調整のために別のアプリケーションで添付ファイルを開いて入力をするというのは面倒ではありませんか。

メールは次第に、小包や宅配便につける送り状のようになってきているのかも知れません。本体は添付されたファイルだというわけです。このような流れが続くとなると、とくに、添付ファイルの大きさへの関心も薄れそうです。今では、平気で4MBのファイルを添付して送ってくる非常識な人がいます。以前からネットワーク利用時の「常識」が問われていましたが、ますます、リテラシーを身につける必要性があるといえるでしょう。