Daily Archives: 2010-03-13

大学における「人材育成」

昨今、「人材育成」がよく話題になります。それだけ、難しいことだということでしょう。

大学でも、あるいは学界でも「人材育成」が議論されることは多いのですが、産業界や企業におけるものとは少し違うように思えます。大学や学問の世界で、「人材を育成する」ことはどういうことなのかと考えます。大学では、よく、「人材育成」という文脈で「教育」が議論されます。「大学教員は研究に力を注ぐあまり、教育がおろそかになっているのが問題だ」というのは、人材育成という課題にとって問題だといっているのでしょう。

「人材を育成する」というのは、どうも、上から目線といった感じがして、大学という場に適当なのかどうか、疑問に感じます。大学生は学問の途に入ってきた大人です。教員と学生が議論を戦わせて互いに自己研鑽を積むというのが本来の大学の姿だったわけです。いつの間にか、「教員が学生という芽を育てる」というのが当たり前になったようです。大学の大衆化ということでしょうか。

長年、大学にいると、ときに、「いい人材を育てることが使命だ」と言ったり、「多くの人材を育てましたね」と言われたりすることがあります。しかし、私の実感は、「いい人材が育つようにする」ことが使命であって、「多くの人材が育った」ことを喜ぶといったところです。

技能を身につける、スキルを磨く、といったところでは「育てる」教えが必要でしょう。英語力を高めたり、今では情報リテラシーを修得するといったことはこれにあたるでしょう。しかし、それらは英語学や情報科学といった学問体系を学ぶこととは違います。学問を学ぶことは、自らの見識でものごとを見る力を身につけることですから、一方的に教え込むようなものではないと思います。教員は学生の手助けをするに過ぎません。教員もそれによって学ぶわけです。

大学教育の中にも、もちろんそのようなコースも必要ですが、すべてをそのような向きに進めようとすることは疑問です。産業界からの要請もあって、大学院課程で実践的なコースを試行するプログラムがいくつか行われています。そこでは、カリキュラムに基づいて教材が開発され、それにしたがった特定の講義と実習だけで修了できるようにしている大学もあります。形にはめてしまえば人材が育つのかどうか?一定数の修了生は出るでしょうが、体系的な知識と技術とともに、見識を身につけた人材が育つのかどうか?「教え込む」ことを過信しないのがよいと思います。

国際ワークショップの開催場所

われわれはほぼ毎年、研究室(まわりの関係者)で主催する国際ワークショップを開いてきています。最近は、科研費の研究課題の「双方向変換」に関わるものが多いといえます。分野によっても違うでしょうが、われわれの場合には全体で30名、内、海外からの参加者が10名〜15名といったところです。

今日の夕方から、ワークショップの場にきています。今回は海外からの参加者は19名です。
http://www.biglab.org/4th-Btrans/#links

ワークショップは国際会議と違って、研究途上のアイデアや、場合によってはすでに発表したものの紹介など、交流を深めるために有効だと思います。とくに、国内で開くときには、学生にも参加してもらって、国際的な視野をもって研究を進める刺激を得る機会にしてもらっています。

いつも話題になるのは、このようなワークショップを開く場所のことです。経費のこともありますが、運営にかかるオーバーヘッドを少なくしたいというのが一番の大きな課題です。

今回のパレスホテル箱根でワークショップを開くのは3回目です。2000年と2004年にここで開きました。様子がわかっているということもあるのですが、アクセスが便利(というより、分かりやすい)のがなによりです。もっとも、成田空港から新宿、新宿から高速バスですので、それほど近くはありません。しかし、バス停がホテルの前にあるので、迷うことはありません。ここでは、準備のときにも協力いただいたのがありがたかったというのが印象に残ります。これで分かるように、実は、今回は、私のところで面倒をみたわけではなく、同僚であったH氏のところでアレンジしていただいたものです。ワークショップは明日、明後日が本番ですが、なかなかよいものになると期待しています。

このようなワークショップを(日常的にというまでもなく)折に触れて、大げさな準備なくできることは、われわれにとって大事なことではないでしょうか。国際会議のようなフォーマルな会合にはそれなりの準備と体制が必要です。参加者がオープンですので、それなりの準備が必要でしょう。しかし、日常的な共同研究を進めるためのワークショップを開くことには、相互に簡潔な形が望まれるでしょう。

われわれは、(これは、それを宣伝するというわけではなく)今、開いているパレスホテル箱根

http://www.hakone.palacehotel.co.jp/

と、湘南国際村センター

http://www.shonan-village.co.jp/

をよく利用しています。

東京から、また成田からもアクセスが分かりやすい、というのと、様子が分かっているという経験の部分もかなり大きいといえます。もちろん、それぞれのサイトでのサポートが次の機会につながっています。

箱根では3回ですが、湘南国際村ではもっとやったように思います。それにしても、候補が2つでは足りないというのが率直な印象です。同じテーマでは、2箇所では飽きてしまいます。新たな場所があればよいと思っています。

東京近辺では、思ったほど可能性は多くありません。もちろん、経費、宿泊費等々、わがままな要求ではありますが、実質的な研究交流のためのワークショップ開催の情報をいただきたいというところです。